めろろって誰

140文字じゃ、足りないことを。

イノシシの水飲み場

 私は普段マックフロートを頼むとフタを外し、スプーンでソフトクリームをすくって食べ、それがなくなったら飲み物部分をすする。スターバックスのフラペチーノもそうだ。店員と話す余力がある日は注文時に「蓋いらないです」と断っているくらいだ。でも今日は違う。なんとなく、そのまま飲んでみたくなってそのまま飲んだ。ソフトクリームや氷が溶け始めるとコーラもちょうど良い濃さになり、悪くない。次から蓋を付けたまま飲んでみようかな?今日は読書をする為にマクドナルドへ行ったのだ。先週図書館で借りた、短い物語が10編ほど入った短編集。夢中で半分ほど読んだところでフロートも底をついたので場所を移すことにした。

 

 

 歩みを進めたら自分が中学くらいの時に田んぼを埋め立てて造られた大きめの公園に着いた。地元の中学に進学しなかったために、この街で遊ぶ事はなく思い出も全くないその公園で私は読書の続きをする事にした。ベンチの上で、丘陵の芝生の上、よくわからないステージの上…と何度か場所を変えて読書に耽った。日焼け止めは塗っていないがこの際どうでもよかった。今日はこの場所で、走り回る小学生の声を聞きながら、日光に照らされながら、気持ちよく読書がしたかったのだ。

 

 公園の隣には小学校がある。ピンクと水色で、よくわからない形状をしたその建物は実は母校だ。正確には私が卒業して3〜4年後に土地を少しずらし建てられた新しい校舎なので全く思い出はない。ふと「その小学校」のグラウンドを見ると、見覚えのある水飲み場が見えた。かつてのグラウンドの入り口にあり、円状で真ん中に小さいイノシシの銅像がある「イノシシの水飲み場」と言う名で親しまれたアレだ。体育の前後に、休み時間に、放課後に水を飲んだあの水飲み場。「ここの蛇口は○○が口をつけて飲んでたから汚いよ」とか「ここの蛇口の水が1番冷たくて美味しい」とかいう噂で盛り上がったっけ。ああ、あれだけは移設したんだ…嬉しいなと思った。懐かしさが込み上げた。「イノシシの水飲み場」の事を10年以上ぶりに思い出したのだから…。

 

ちなみにかつての校舎だった場所には今ではキラキラネームの保育園が建ち、かつてグラウンドだった場所の地盤はコンクリートで固められ新しめの住宅が建ち並んでいる。ああ、変わってしまった。道は変わらないのに景色は完全に変わってしまった。目を閉じれば当時の校舎とグラウンドと自分たちの姿が一瞬で浮かぶのに、パッと目を開けるとそこは住宅地と保育園なのだ。

或る種のノスタルジー。寂寥感。虚無感。

私は一刻も早くこの街を出たいはずなのに、

痛烈に襲ってくるこの感覚はいったい何だろう。

校舎が昔のままあったらまた違ったんだと思う

ないから、こんなにも………

 

 

そしてここで、読書は好きだが文章は書けない事に気づく。特にオチもないし、やめておこう…

取り敢えず飛びつくが、途中で飽きたりよくわからなくなって辞める、人生で何度もあったよね。「私」って感じがする。あ、でも読書はしっかり

一冊読みきりました。

 

 

おわり